本文へ移動
JobLinks

電話・メール・フォームで受付/メールは1営業日以内に返信します

  1. トップ
  2. 行政ウォッチ
  3. 戦後日本の構造を読み解く

SPECIAL

戦後日本の構造を読み解く

2026年10月12日更新 / OECD・政府の一次資料で整理 / JobLinks編集部(株式会社Period)

35年間、日本の賃金はほとんど上がっていません。同じように止まったのはイタリアだけ。なぜ他の国は上がったのか。物価が上がったアメリカは本当に豊かなのか。そして、人手不足の現場の賃金をどう上げるのか。データと一次資料で、順番に読み解きます。

戦後日本の構造を読み解く
-2.1%イタリア
+53.4%アメリカ

OECD Average annual wages(2025年基準の実質値・米ドル購買力平価)。2026年10月12日取得。

事実:一次資料で確かめられること政府の見解:省庁の公式資料分析:編集部の読み解き提言:編集部の考え
なぜ日本とイタリアは上がらず、他の国は上がったのか?カギは「生産性」と「その分け方」

賃金を上げる元手は、働く人が1時間で生み出す価値(労働生産性)です。まず賃金と生産性を、同じ「1990年=100」のものさしで並べます。ボタンで切り替えられます。

8010012014016018019902000201020202025アメリカ 153イギリス 147ドイツ 135フランス 135日本 99イタリア 98
8010012014016018019902000201020202025アメリカ 180イギリス 162日本 158ドイツ 146フランス 141イタリア 117

実質賃金:OECD Average annual wages。労働生産性:OECD Productivity database「GDP per hour worked」(2020年基準の実質値・購買力平価)。ドイツは1991年=100。

事実 2つを並べると、違いがはっきりします。

時間当たり労働生産性の伸び実質賃金の伸びアメリカ+80%+53.4%イギリス+62%+47.2%ドイツ+46%+35.0%フランス+41%+34.6%日本+58%-1.2%生産性は伸びたのに賃金に回っていないイタリア+17%-2.1%そもそも生産性がほとんど伸びていない
ITイタリア:生産性がほとんど伸びなかった

1時間あたりの生産性は35年で+17%。元手が増えないので、賃金も上げられませんでした。

JP日本:生産性は伸びたのに、賃金に回らなかった

生産性は+58%伸びたのに、実質賃金は-1.2%。稼ぐ力の伸びが、働く人の給料に届いていません。

政府の見解 厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」は、日本では生産性が1%上がっても賃金は約0.4%しか増えない(アメリカはほぼ1%)と分析しています。理由として、次の点を挙げています。

1企業がお金をため込んだ

企業の内部留保は1996年の約150兆円から2021年の約500兆円へ。先行きの不安から、賃上げより貯蓄を選びました。

2働く人の交渉力が弱まった

労働組合の組織率は長く低下。賃上げを求める力が弱くなりました。

3パートなど短時間で働く人が増えた

働く人の構成が変わり、平均の賃金を押し下げました。

+ほかにも検証された仮説

白書は「日本型雇用慣行の変容」「仕事へのニーズの多様化」も含めた5つの仮説を検証しています。くわしくは解説記事で取り上げます。

アメリカは物価も上がった。本当に豊かなのか?「物価を差し引いても上がった」けれど「住まいは賃金以上に上がった」

1990年から2020年までの30年で、名目の賃金・物価・家賃・住宅価格がどれだけ変わったかを比べます。

-50%+0%+50%+100%+150%+200%アメリカ+163%+98%+144%+188%日本+2%+12%+9%-35%名目賃金物価(CPI)家賃住宅価格

名目賃金:OECD Average annual wages(自国通貨)。物価:OECD消費者物価指数。家賃・住宅価格:OECD Analytical house prices。日本の消費者物価がOECDの同じデータで2020年まで取れるため、期間を1990〜2020年にそろえています。

US物価を差し引いても、賃金は上がった

名目賃金は+163%、物価は+98%。物価の上昇を上回って賃金が増えています。

!ただし住まいは、物価よりずっと上がった

住宅価格は+188%、家賃は+144%。家を持つ人と借りる人、高所得の人とそうでない人で、豊かさの実感は大きく分かれます。

分析 OECDの「平均」年収は、高い収入の人に引き上げられます。アメリカは「平均では豊か」でも「誰もが豊か」とは限りません。一方の日本は、賃金+2%・物価+12%・住宅価格-35%。物価が安定していた分、賃金がほぼ止まっても暮らしが急に苦しくはならず、問題が見えにくかったとも言えます。

中国・ロシア・中東と、日本はどうつながっているのか?貿易とエネルギーで見ると、日本の弱点が見える
日本中国貿易総額の 20.1%18年連続で最大の貿易相手国(2024年)アメリカ輸出の 19.9%輸出先1位(2024年)・同盟国中東原油の 93.7%原油輸入の中東依存度(2025年10月)ロシアLNGの 約7〜8%サハリン2など。平和条約は未締結

中国・アメリカ:ジェトロ「2024年の日中貿易」(財務省貿易統計をドル換算)。中東:資源エネルギー庁「石油統計速報」2025年10月分。ロシア:nippon.com「日本のLNG輸入の7〜8%がロシア産」。

CN中国:最大の貿易相手

輸入の22.5%が中国から。部品や日用品の多くを頼っています。1972年に国交を正常化し、1978年に平和友好条約を結びました。

ME中東:エネルギーの生命線

原油のほぼすべてを中東から輸入。原油高や円安は、そのまま物価と企業のコストに響き、賃上げの余力を奪います。

RUロシア:エネルギーと未解決の課題

1956年の日ソ共同宣言で国交を回復しましたが、平和条約はまだ結ばれていません。LNGの一部をサハリン2から輸入しています。

USアメリカ:同盟国で最大の輸出先

1960年の日米安保条約と地位協定が今も続いています。2024年の輸出の19.9%がアメリカ向けです。

写真で見る戦後80年

1945年9月2日、戦艦ミズーリ号での降伏文書の署名
1945戦艦ミズーリ号で降伏文書に署名(9月2日)写真:U.S. Navy(パブリックドメイン)
1951年、サンフランシスコ平和条約に署名する吉田茂首相
1951吉田茂首相が平和条約に署名。翌年4月28日に主権を回復写真:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
1972年5月、沖縄・那覇での式典
1972沖縄が本土に復帰(5月15日)写真:U.S. Army(パブリックドメイン)/沖縄県公文書館所蔵
現在の渋谷の街並み
NOW人口減少と人手不足の時代へ写真:Syced(CC0)
戦後80年の年表
人手不足=日本人に人気がない=給料も安い。この悪循環をどう断ち切るか?特定技能の対象になっている「人手不足の業界」の話です
単価・料金が低い賃金が低い日本人に選ばれない人手不足長時間労働・現場の負担交渉力が弱く値上げできない悪循環どこか1か所を切れば止まる

事実 JobLinksに掲載中の求人16,550件を集計すると、特定技能の対象分野と重なる介護・清掃・宿泊・製造などは、全体の中央値(340万円)を下回っています。

施工管理・設備保守350万円ドライバー350万円製造・組立・加工318万円軽作業・倉庫316.8万円ホール・調理322万円ホテル・宿泊300万円介護・医療・保育300万円警備・清掃・施設管理288万円全体の中央値 340万円

JobLinks掲載求人の初年度想定年収(下限)の中央値(2026年10月7日時点・16,550件)。年収相場レポートより。

悪循環は、どこか1か所を切れば止まります。日本ですでに始まっている仕組みと、海外の例を並べます。

① 安い単価を、法律で止める

改正建設業法(2025年12月全面施行)。国が「労務費の基準」を示し、著しく低い労務費での見積りを依頼した発注者には勧告・公表。

取適法(2026年1月1日施行)。下請けからの価格協議に応じず、一方的に代金を決めることを禁止。

② 運賃・報酬に、賃金の元手を乗せる

トラックの標準的運賃を平均約8%引き上げ(2024年6月施行)。荷待ち・荷役の料金も新設。

2026年度の介護報酬改定で、処遇改善加算の対象を介護職員から介護従事者全体へ広げました。

③ 「技能が上がれば給料が上がる」階段を見せる

建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収の目安。レベル1の374万〜501万円から、レベル4では707万〜877万円。

④ 外国人材を「安い労働力」にしない

日本人と同等以上の報酬が条件です。外国人で賃金を抑えると、日本人の賃金も上がりません。同じ水準で雇うことが、業界全体の底上げになります。

レベル1見習い374〜501万円/年レベル2中堅569万円/年レベル3職長628万円/年レベル4登録基幹技能者707〜877万円/年

国土交通省「建設キャリアアップシステムのレベル別年収の試算」(2023年6月16日)。主要10職種の試算例で、支払いを義務づけるものではありません。

世界の成功例から考える、日本の産業の変え方「業界ぐるみで賃金の底を決める」「技能と賃金をつなぐ」
SGシンガポール:段階的賃金モデル(PWM)清掃・警備・造園

職務レベルごとに賃金の下限と訓練を定め、守らない会社は営業許可や登録が受けられません。清掃は2014年、警備・造園は2016年から。

DEドイツ:介護の最低賃金時給 €20.50 → €21.58

一般の最低賃金(€12.82)とは別に、介護だけの最低賃金を資格別に決めています。介護専門職は2027年7月に€21.58へ。

AUオーストラリア:外国人の年収の下限A$76,515 以上

熟練ビザで外国人を雇うときは、この年収以上で、同じ仕事のオーストラリア人より低くしてはいけません(2025年7月から)。

提言 3つに共通するのは、「1社の努力」ではなく「業界のルール」で賃金の底を決めていることです。日本でも、次の順番で進めるのが現実的だと考えます。

STEP 1価格に乗せる

労務費の基準・標準的運賃・取適法を使い、賃上げ分を単価に乗せる交渉を当たり前にする

STEP 2技能と賃金をつなぐ

CCUSのような「レベル別の賃金」を介護・清掃・造園・物流にも広げ、将来の年収を見せる

STEP 3生産性で稼ぐ

機械化・IT化で1人あたりの売上を上げ、外国人材も日本人と同じ階段で育てる

条約・協定(抜粋)

文書日付現在原文
サンフランシスコ平和条約1951年9月8日署名・1952年4月28日発効有効世界と日本
日ソ共同宣言1956年10月19日署名有効(平和条約は未締結)世界と日本
日米安全保障条約(新)・地位協定1960年1月19日署名有効世界と日本
日中平和友好条約1978年8月12日署名有効世界と日本

FOR COMPANIES

人手不足の業界の採用・賃金設計のご相談

特定技能での採用、賃金の階段づくり、単価交渉の準備まで。業種と人数をお聞かせください。相談は無料です。

DATA

求人の年収相場

JobLinksの掲載求人から、職種別・都道府県別の年収を集計しています。

出典

  • OECD「Average annual wages」「Productivity database(GDP per hour worked)」「Consumer prices」「Analytical house prices」(2026年10月12日取得)
  • 厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」第Ⅱ部第1章
  • ジェトロ「2024年の日中貿易」/資源エネルギー庁「石油統計速報」2025年10月分/nippon.com「日本のLNG輸入」
  • 国土交通省「改正建設業法」「建設キャリアアップシステムのレベル別年収の試算」(2023年6月16日)「トラックの標準的運賃」(2024年3月22日告示)
  • 政府広報オンライン「取適法」/社会保障審議会介護給付費分科会(2026年度介護報酬改定)
  • シンガポール人材省「Progressive Wage Model」/ドイツ連邦保健省・労働社会省(2025年11月25日)/オーストラリア内務省(Skills in Demand visa)
  • 写真:U.S. Navy、U.S. Army(沖縄県公文書館)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)、Syced(CC0)。職種写真:JobLinks
無料で相談する →