
1990→2025年
OECD Average annual wages(2025年基準の実質値・米ドル購買力平価)。2026年10月12日取得。
賃金を上げる元手は、働く人が1時間で生み出す価値(労働生産性)です。まず賃金と生産性を、同じ「1990年=100」のものさしで並べます。ボタンで切り替えられます。
実質賃金:OECD Average annual wages。労働生産性:OECD Productivity database「GDP per hour worked」(2020年基準の実質値・購買力平価)。ドイツは1991年=100。
事実 2つを並べると、違いがはっきりします。
1時間あたりの生産性は35年で+17%。元手が増えないので、賃金も上げられませんでした。
生産性は+58%伸びたのに、実質賃金は-1.2%。稼ぐ力の伸びが、働く人の給料に届いていません。
政府の見解 厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」は、日本では生産性が1%上がっても賃金は約0.4%しか増えない(アメリカはほぼ1%)と分析しています。理由として、次の点を挙げています。
企業の内部留保は1996年の約150兆円から2021年の約500兆円へ。先行きの不安から、賃上げより貯蓄を選びました。
労働組合の組織率は長く低下。賃上げを求める力が弱くなりました。
働く人の構成が変わり、平均の賃金を押し下げました。
白書は「日本型雇用慣行の変容」「仕事へのニーズの多様化」も含めた5つの仮説を検証しています。くわしくは解説記事で取り上げます。
1990年から2020年までの30年で、名目の賃金・物価・家賃・住宅価格がどれだけ変わったかを比べます。
名目賃金:OECD Average annual wages(自国通貨)。物価:OECD消費者物価指数。家賃・住宅価格:OECD Analytical house prices。日本の消費者物価がOECDの同じデータで2020年まで取れるため、期間を1990〜2020年にそろえています。
名目賃金は+163%、物価は+98%。物価の上昇を上回って賃金が増えています。
住宅価格は+188%、家賃は+144%。家を持つ人と借りる人、高所得の人とそうでない人で、豊かさの実感は大きく分かれます。
分析 OECDの「平均」年収は、高い収入の人に引き上げられます。アメリカは「平均では豊か」でも「誰もが豊か」とは限りません。一方の日本は、賃金+2%・物価+12%・住宅価格-35%。物価が安定していた分、賃金がほぼ止まっても暮らしが急に苦しくはならず、問題が見えにくかったとも言えます。
中国・アメリカ:ジェトロ「2024年の日中貿易」(財務省貿易統計をドル換算)。中東:資源エネルギー庁「石油統計速報」2025年10月分。ロシア:nippon.com「日本のLNG輸入の7〜8%がロシア産」。
輸入の22.5%が中国から。部品や日用品の多くを頼っています。1972年に国交を正常化し、1978年に平和友好条約を結びました。
原油のほぼすべてを中東から輸入。原油高や円安は、そのまま物価と企業のコストに響き、賃上げの余力を奪います。
1956年の日ソ共同宣言で国交を回復しましたが、平和条約はまだ結ばれていません。LNGの一部をサハリン2から輸入しています。
1960年の日米安保条約と地位協定が今も続いています。2024年の輸出の19.9%がアメリカ向けです。
写真で見る戦後80年




事実 JobLinksに掲載中の求人16,550件を集計すると、特定技能の対象分野と重なる介護・清掃・宿泊・製造などは、全体の中央値(340万円)を下回っています。
JobLinks掲載求人の初年度想定年収(下限)の中央値(2026年10月7日時点・16,550件)。年収相場レポートより。
悪循環は、どこか1か所を切れば止まります。日本ですでに始まっている仕組みと、海外の例を並べます。

建設改正建設業法(2025年12月全面施行)。国が「労務費の基準」を示し、著しく低い労務費での見積りを依頼した発注者には勧告・公表。
全業種取適法(2026年1月1日施行)。下請けからの価格協議に応じず、一方的に代金を決めることを禁止。

物流トラックの標準的運賃を平均約8%引き上げ(2024年6月施行)。荷待ち・荷役の料金も新設。
介護2026年度の介護報酬改定で、処遇改善加算の対象を介護職員から介護従事者全体へ広げました。

建設建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収の目安。レベル1の374万〜501万円から、レベル4では707万〜877万円。

特定技能日本人と同等以上の報酬が条件です。外国人で賃金を抑えると、日本人の賃金も上がりません。同じ水準で雇うことが、業界全体の底上げになります。
国土交通省「建設キャリアアップシステムのレベル別年収の試算」(2023年6月16日)。主要10職種の試算例で、支払いを義務づけるものではありません。
職務レベルごとに賃金の下限と訓練を定め、守らない会社は営業許可や登録が受けられません。清掃は2014年、警備・造園は2016年から。
一般の最低賃金(€12.82)とは別に、介護だけの最低賃金を資格別に決めています。介護専門職は2027年7月に€21.58へ。
熟練ビザで外国人を雇うときは、この年収以上で、同じ仕事のオーストラリア人より低くしてはいけません(2025年7月から)。
提言 3つに共通するのは、「1社の努力」ではなく「業界のルール」で賃金の底を決めていることです。日本でも、次の順番で進めるのが現実的だと考えます。
労務費の基準・標準的運賃・取適法を使い、賃上げ分を単価に乗せる交渉を当たり前にする
CCUSのような「レベル別の賃金」を介護・清掃・造園・物流にも広げ、将来の年収を見せる
機械化・IT化で1人あたりの売上を上げ、外国人材も日本人と同じ階段で育てる
条約・協定(抜粋)
| 文書 | 日付 | 現在 | 原文 |
|---|---|---|---|
| サンフランシスコ平和条約 | 1951年9月8日署名・1952年4月28日発効 | 有効 | 世界と日本 |
| 日ソ共同宣言 | 1956年10月19日署名 | 有効(平和条約は未締結) | 世界と日本 |
| 日米安全保障条約(新)・地位協定 | 1960年1月19日署名 | 有効 | 世界と日本 |
| 日中平和友好条約 | 1978年8月12日署名 | 有効 | 世界と日本 |
出典
- OECD「Average annual wages」「Productivity database(GDP per hour worked)」「Consumer prices」「Analytical house prices」(2026年10月12日取得)
- 厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析」第Ⅱ部第1章
- ジェトロ「2024年の日中貿易」/資源エネルギー庁「石油統計速報」2025年10月分/nippon.com「日本のLNG輸入」
- 国土交通省「改正建設業法」「建設キャリアアップシステムのレベル別年収の試算」(2023年6月16日)「トラックの標準的運賃」(2024年3月22日告示)
- 政府広報オンライン「取適法」/社会保障審議会介護給付費分科会(2026年度介護報酬改定)
- シンガポール人材省「Progressive Wage Model」/ドイツ連邦保健省・労働社会省(2025年11月25日)/オーストラリア内務省(Skills in Demand visa)
- 写真:U.S. Navy、U.S. Army(沖縄県公文書館)、Wikimedia Commons(パブリックドメイン)、Syced(CC0)。職種写真:JobLinks

